自由が丘で育った私の記憶の中には、懐かしい風景や面白い想い出話が色あせることなく残っている。クスッと笑ってしまうような当時を思い出し 遠くをぼんやり見ると その時の光景が見てえくるような話を 気ままに書いていこうと思う。
物心ついた頃からおばちゃん(ダック先代社長)がいた。パーマヘアー、大きなこげ茶色フレームの眼鏡、いつでもパンツ(スカート姿は見たことがない)、とにかく元気な人だった。 私には 優しくて 甘かった 。けれども、お客様に対しては厳しい人だった。その厳しさに(言い方がキツイ)怒って帰るお客様もいた。例えば ボタンを買いに来たお客様が 合わせる生地や洋服を持ってこないと「アカン。話んならん」「帰りなさい」大抵のお客様はビックリする。ボタンを買いに来たのに 帰れと言われるのですから…今では考えられない事ですが、お店ではいつものことであった。しかし、これが おばちゃんのこだわりであり、合わせる物さえあれば ピッタリのボタンを選べる!という 自信なのであった。
昔 自由が丘駅前には柳の木がたくさんあった。ロータリーを囲むように、柳が風に吹かれ、ゆ~らん ゆ~らんと揺れていた。柳といえば・・・うらめしや~と髪の長いお化けが現れるのが定番。なので「柳の下を通る時は息を止めるとお化けに会わないんだって。」という友達からのアドバイスを信じ、必ず息を止めて歩いていた。夜になると手相占いの人が今にも消えそうな明かりを灯して柳付近に座るので 更に怖さが増すのだ。スイーツの街と言われる 現在の自由が丘からは想像もできないのでは?風に揺れる柳も 今となっては 懐かしく あれはあれで良かったなと思う。